幾重にも重なる黄ばんだ紙のページのあいだで、彼女は時代の息づかいを取り戻していく。

切り取られたまなざし、レンズ越しのやわらかな光と緊張感——それらはいまもなお、消えることのない温度を放ち続けている。

私たちは彼女と、「月刊」というシリーズについて語り合った。
それは、イメージと記憶、そして感受性をめぐるひとつの物語である。

受訪者:Mihori Suzuki 鈴木滿帆吏
Editor / Producer
1995年生まれ、東京都出身。上智大学外国語学部フランス語学科卒。 2019年より「ARTイワタ」のイワタに師事し、プロデューサーアシスタントを経て、2021年より写真集や漫画誌グラビアなどを担当。 2024年に出版レーベル「manpan press」を立ち上げ、『せりなが』(モトーラ世理奈×松岡一哲)、『ナナ 沢渡朔』を刊行。またフリーとしては同年上白石萌歌写真集『charm charm』、古川琴音写真集『chipie』など、写真出版を中心に活動中。
Instagram: @mihoristagram
manpan press
manpan pressは、2024年冬に立ち上げられたインディペンデント出版レーベルです。国境を超えた自由なテーマで、被写体と写真家によるより自由な表現を引き出し、きらめく本にします。 第一弾はモトーラ世理奈×松岡一哲写真集『せりなが』、第二弾『ナナ 沢渡朔』
Instagram:@manpan_press
Shop :Manpan Press

── 「月刊〇〇」と出会ったきっかけはなんでしたか?

最初に知ったきっかけは正直覚えていないのですが、当初は好きな写真家が撮影している号を買っていました。そのあと、月刊シリーズのプロデューサー・イワタさんのアシスタントを始めてから、他の号も集めるようになりました。

── あの雑誌を初めて手に取ったとき、どんな印象を持ちました?

「こんなに有名な女優さんたちが、こんなに攻めた表現をしているんだ!」と驚きました。

── どんなモデルや写真家が特に印象に残っていますか?

笠井爾示さん撮影の加護亜依さん。小学生の時にミニモニが大好きだったので、そのイメージとのギャップが衝撃的でした。
あとは、「月刊黒田エイミ」(撮影:沢渡朔さん)、「月刊池脇千鶴」(撮影:藤代冥砂さん)、「月刊熱帯魚」(撮影:蜷川実花さん)、「月刊辰巳奈都子 罪と罰」(撮影:野村佐紀子さん)なども印象的です。

── いま見返しても心を掴まれる号やページはありますか?

たくさんあって選ぶのが難しいですが、デザイナーの瀬崎さんが好きだと言っていた「月刊奥貫薫」(撮影:若木信吾さん)を改めて見返したときに、グッときました。

── 他のグラビア雑誌と比べて、「月刊〇〇」ならではの魅力はどんなところだと思いますか?

写真家と被写体のぶつかり合いが感じられるところ。ブックデザインやグラフィックが自由なところ。そして、インタビューが赤裸々すぎるところ。
見返すと、当時の時代感が色濃く出ているものから、今見ても圧倒的にかっこいいものまで本当に様々です。
正直、今の時代を通して見ると“エグみ”が強くて悪趣味に見えるものもあります(笑)。でも、そういう実験的なものづくりに挑戦していた当時の熱量自体が、とてもかっこいいと思います。

── 当時の社会や空気感と、グラビアの表現にはどんな関係があったと思いますか?

私はグラビア全盛期にはまだ子どもだったので、社会の空気感までは体感していません。
でも当時は、雑誌だけでなくグラビアアイドルがスターとして活躍していて、それがメジャーな文化だった時代。人気写真家も多く、出版も盛り上がっていた。そのさまざまな要素とタイミングが重なって生まれたのが月刊シリーズだと思います。
登場しているグラビアアイドルの方々も、それぞれの個性が際立っていて、今見てもとても魅力的です。

コレクターとしての視点

── どうして集め始めようと思ったんですか?

もともと80年代〜00年代のアートやタレント写真集が好きで、よく古本屋で買っていました。その流れで、好きな写真家の作品から月刊シリーズを集め始め、イワタさんのアシスタントになってからは、イワタさんの手持ちを見せてもらって「これ、かっこいい!」と思った号を探して買うようになりました。

── 集めるうちに、自分の中で何か変化はありましたか?

変化というより、自分の仕事に大きな影響を与えています。
今、写真集をつくる仕事をしている中で、被写体と写真家ができるだけ同じパワーでつくれる作品づくりを意識するようになりました。
「何十年経っても色褪せない、作品性の高い写真集を、タレント写真集のジャンルでもつくれるし、つくっていきたい!」という気持ちがより強くなりました。

── 一番苦労した号や、探しているけれどまだ出会えていない一冊はありますか?

特にありません。

── コレクションを通じて、何を残したい・伝えたいと思いますか?

とにかく、今見ても本当に面白いシリーズなので、今の若い人にもぜひ見てほしいです。

── あなたにとって“グラビアを集める”という行為はどんな意味がありますか?

「グラビアだから集めている」という意識はなく、ただ写真が好きで!
アートやカルチャー写真集を集める延長で、グラビアやタレントの写真集も自然と集まっていきました。

グラビアとエロスの見方

── 昔のグラビアと、いまのグラビアの違いをどう感じますか?

まず、単純に予算感が全然違うと思います(笑)。
それに、昔のグラビアはモデルも制作側も“媚びていない”印象を持つことが多いです。

── 写真の中の“エロス”を、どんなふうに受け取っていますか?

私が女性ということもあるかもしれませんが、特別「エロス」を意識して写真を見ることはありません。
でも、写真や被写体の“色気”にドキッとする瞬間はたくさんあります。

── グラビアをアートとして見る視点についてどう思いますか?

グラビアやヌードは、肌の情報が多い分、逆に情報量が少なくて、被写体や写真家の本質が見える気がします。
そういう意味で、写真としての強さや視点からアートとして見ることも自然だと思います。
ただ、「これがアートなグラビアだ!」と作り手が言いすぎるのは少し違う気がしていて、アートかどうかは見る側が自由に感じるものだと思います。

── もし今この時代に『月刊〇〇』が復活したら、どんなテーマで見たいですか?

実は、最近も小学館や講談社などでイワタさんと一緒に制作しています。
私が関わったものもあるので、ぜひ見てください!(笑)

感性・記憶・美意識

── 初めてグラビアを見たときの感情を覚えていますか?

とにかくドキドキしました!そして、かっこいいと思いました。

── 写真のどんな瞬間に“美しい”と思うことが多いですか?

感覚的なものなので、ルールや基準はありません。ただ、パッと見て美しいと思います。

── モデルや写真家に共通して感じる“人間らしさ”とは?

無理をしていないこと。感情を隠していないことだと思います。

グラビア文化の未来

── 今の若い世代に、この時代のグラビアをどう伝えたいですか?

私は「この時代」にリアルタイムで属していたわけではないのですが(笑)、
何かが一番盛り上がっていた時代、勢いのある時代の作品にはエネルギーがあって、それを見ると創作意欲が湧きます。
この時代のグラビアからもたくさんのインスピレーションを得たいし、それを今の感覚で私も写真集を作りながら、つなげていきたいです。

── デジタル化・アーカイブ化についてどう感じていますか?

アーカイブとしてのデジタル化は、手に入りにくいものを見たいときに本当にありがたいです。
でも、紙の写真集には独特の良さがあります。
「自分だけのものになる感覚」は、紙の写真集でしか得られないと思います。